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<< 書き手の持つべき慈愛とは >>


2015/12/3(Thu)

 およそ僕はストーリーテラーとしては優しすぎたのだとつくづく思う。小説であれ歌詞であれシナリオであれ、僕は誰一人として登場人物に本当の地獄を味わわせることができなかった。絶望の淵に叩き落としたようでも、彼らにどこか逃げ道を用意していたような気がする。
 つまり僕は慈愛に満ちた全知全能の神を登場人物たちに与えていた。だから彼らはいつもそれに縋り、人間としての真価を発揮できなかったのだと思う。
 今になってようやく気づいた。書き手は別の意味の慈愛を秘めて登場人物たちを突き放さなければならないのだと。


小谷隆


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